卒業後に就職先が決まらないまま時間が経つと、求人を見るたびに「自分はどこに応募していいのか」が分からなくなりがちです。応募資格の書き方は求人ごとにばらばらで、新卒向けの情報を読んでも自分に当てはまらない部分が出てきます。
この記事では、既卒の就職を「応募する枠を選び直す作業」として整理します。先に決めておく3つのこと、応募先を選ぶときに求人票のどこを見るか、選考が進まないときに何を変えるかを順に示します。在学中の就職活動とは進め方が変わる部分を中心に扱います。
既卒の就職は、応募数より先に「応募する枠」を決める
結論から言うと、既卒の就職でまず手をつけるのは、応募数を増やすことではなく、自分が応募している枠を確認して選び直すことです。
既卒が応募できる求人は、大きく3種類に分かれます。卒業後の年数で応募資格を定めている新卒採用枠、既卒・第二新卒を対象にした枠、中途採用の未経験可の枠です。この3つは募集の時期、提出書類、面接で確認される内容が違います。同じ書類と同じ説明文で3つすべてに応募すると、どこで評価が止まっているのかが分からないまま応募数だけが積み上がります。
既卒の就職が進まないときに起きていることの多くは、応募先が足りないことではなく、応募している枠と準備している説明が噛み合っていない状態です。枠ごとの違いそのものは既卒と新卒の違いを整理した記事で扱っています。ここでは、枠を決めた後に何を見て、どう動かすかを扱います。
既卒の就職で先に決める3つのこと
応募を始める前に決めておくと、書類の作り直しと説明の揺れが減ります。3つとも、求人を探す前に紙に書き出せる内容です。
職種の方向を3つまでに絞る
「事務系」「営業系」といった括りではなく、求人票に載っている職種名で3つまで挙げてください。たとえば「営業事務」「法人営業」「ITサポート」のように書きます。
職種名で絞る理由は、志望理由と卒業後の説明を職種ごとに1本ずつ用意する必要があるためです。転職エージェントとして10年目になりますが、応募職種を広げた人ほど説明が一般的な内容に寄っていき、どの選考でも同じことを話す状態になりやすい傾向があります。3職種までなら準備が回り、それを超えると1本あたりの密度が落ちます。
絞れないときは「やりたい順」ではなく「求人の数が多い順」で並べて、上から3つを選んで構いません。進めながら入れ替えられます。
応募する枠を1つ選んで、そこから始める
3種類の枠に同時に応募するのではなく、まず1つに絞って10社前後応募します。結果が出てから別の枠に広げます。
1つに絞る理由は、落ちた原因を切り分けられるようにするためです。3つの枠に混ぜて応募すると、書類で落ちているのか、枠が合っていないのかが区別できません。なお、卒業後の年数で応募資格が決まっている求人に応募する場合、自分が新卒と同じ選考に乗るのかどうかは企業ごとに扱いが違います。この点は既卒が新卒扱いになる条件を整理した記事で扱っています。
卒業後の期間の説明を1本にまとめる
卒業後に何をしていたかは、ほぼどの面接でも聞かれます。応募先ごとに作り直すのではなく、先に1本の説明を作り、応募先に合わせて最後の一文だけ差し替える形にしてください。
説明に入れる要素は、期間、していたこと、そこで分かったことの3つです。評価されるために話を大きくする必要はありません。むしろ、空白を短く見せようとした説明は、面接で時期を確認されたときに前後が合わなくなることがあります。書類側の書き方は既卒の就職活動の進め方をまとめた記事で扱っています。
既卒の就職先を選ぶときに求人票で見る3点
求人票は上から読むと給与と勤務地が先に目に入りますが、既卒の就職では入社後の立ち上がりを左右する項目を先に見た方が判断が安定します。
募集背景が増員か欠員補充か
求人票に「増員」「組織拡大にともない」とあるか、「退職者の補充」「欠員」とあるかを確認してください。記載がない場合は、面接の質問として「このポジションには前任者がいますか」を用意しておきます。
欠員補充の募集では、前任者が持っていた業務をそのまま引き継ぐ形になりやすく、未経験から入る場合は入社直後の負荷が高くなりやすい面があります。増員の募集は人を増やす前提で組んでいるため、業務の切り出しが用意されている場合があります。どちらが良いという話ではなく、入社後3か月に何を任されるかの見通しが変わります。
「未経験可」がどの型なのか
「未経験可」は求人票に書かれる言葉としては同じですが、中身は分かれます。研修の記載が「3か月の研修あり」のように期間だけで書かれている場合、配属後のOJTを指していることがあります。研修の内容が項目で書かれているかどうかを見てください。
| 「未経験可」の型 | 求人票に出るサイン | 入社後に起きやすいこと | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 育成前提型 | 研修内容が項目で書かれている/配属先が複数示されている | 最初の数か月は業務の一部を担当する | 職種の経験を積み上げたい |
| 欠員補充型 | 募集人数が1名/「即日」「急募」の記載 | 引き継ぎながら前任者の業務範囲を担う | 早く実務に入りたい |
| 大量採用型 | 募集人数が多い/選考が1〜2回で完了 | 配属先が入社後に決まる場合がある | まず正社員として就業したい |
型が分かると、面接で確認する内容も変わります。育成前提型なら「最初の3か月で担当する範囲」、欠員補充型なら「引き継ぎの期間」、大量採用型なら「配属先が決まる時期」を聞くことになります。
入社時期と配属の決まり方
既卒の就職では、入社時期が選考の進み方に影響します。卒業後の年数で応募資格が決まっている求人は入社時期が固定されている場合があり、中途の未経験可の枠は内定から1〜2か月後の入社を前提にしている場合があります。
複数の選考を並行して進めるときは、締切のある求人と通年募集の求人を同じリストで管理しないでください。締切のある求人だけを別のリストにして締切日の早い順に並べ、通年募集の求人はその後ろに置きます。
既卒の就職が進まないときの切り分け
応募しているのに進まないとき、応募数を増やす前に、どこで止まっているかを見てください。止まっている場所によって変えるものが違います。
| 症状 | 止まっている場所 | 次に変えること |
|---|---|---|
| 10社前後応募して書類がすべて通らない | 応募している枠 | 職種を広げるのではなく、枠を1つ変える(中途の未経験可枠から既卒・第二新卒向けの枠へ、など) |
| 書類は通るが一次面接で止まる | 卒業後の期間の説明 | 志望理由を書き直すのではなく、期間・していたこと・分かったことの3要素が入っているか確認する |
| 一次は通るが二次以降で止まる | 入社後の見通し | 応募先の仕事で最初の半年に何をするかを、求人票の記載から自分の言葉で言えるようにする |
| 面接の日程が組めないまま時間が経つ | 応募の運用 | アルバイトのシフトを、平日の日中に2枠空けられる形に変える |
| 応募先がすぐ尽きる | 職種の絞り方 | 挙げた3職種のうち、求人数が最も少ないものを別の職種名に入れ替える |
書類がすべて通らない状態で応募数だけを増やすと、同じ結果が増えます。10社前後で結果が出ないときは、枠か職種のどちらかを1つだけ変えて、また10社前後応募してください。2つ同時に変えると、何が効いたのかが分からなくなります。
よくある誤解と、実際のところ
誤解1 応募数を増やせば決まる
新卒の就職活動では応募数が多いほど機会が増えるという話を聞くため、既卒でも同じだと考えやすくなります。ただし新卒採用は同じ枠に大量の応募が集まる仕組みで、既卒の就職は応募できる枠そのものが分かれています。枠が合っていない状態で応募数を増やしても、落ちる理由は変わりにくいです。先に枠を確認する方が早く動きます。
誤解2 とりあえず正社員になれる所に入ればよい
空白期間が延びることへの不安から、職種を決めずに入社を優先する考え方になりやすい場面があります。この判断そのものが間違いというわけではありません。ただし職種の方向を決めずに入社すると、次に転職するときに「なぜその仕事を選び、なぜ辞めるのか」を説明する材料が増えます。3職種まで絞る作業は、入社を遅らせるためではなく、その説明を1本にしておくためのものです。
誤解3 資格を取ってから応募した方が有利
準備してから動きたいという考えから、資格取得を先に置く人は少なくありません。ただし卒業後の年数で応募資格が決まっている求人は募集の時期が限られている場合があり、取得を待っている間にその時期が過ぎることがあります。応募と学習を並行させる方が、応募できる枠を残せます。資格の勉強中であれば、その事実を卒業後の期間の説明に入れて構いません。
既卒の就職を進める手順
ステップ1 職種名を3つ書き出す
求人サイトの職種カテゴリから、求人数が多い順に3つ選びます。この時点で絞り込みすぎる必要はありません。
ステップ2 応募する枠を1つ決める
卒業後の年数で応募資格が決まっている新卒枠、既卒・第二新卒向けの枠、中途の未経験可の枠から1つ選びます。卒業からの年数が浅く、時期が合うなら年数条件のある枠から試す方法があります。
ステップ3 卒業後の期間の説明を1本作る
期間、していたこと、分かったことの3要素で、1〜2文にまとめます。応募先ごとに差し替えるのは最後の一文だけにします。
ステップ4 10社前後応募して、止まる場所を記録する
書類で落ちたのか、一次で落ちたのか、日程が組めなかったのかを分けて記録します。前節の切り分け表と突き合わせます。
ステップ5 変えるものを1つだけ選んで、また10社前後応募する
枠、職種、説明のうち1つだけ変えます。同時に複数変えないのは、効果が分からなくなるためです。
記録しておく項目
- 企業名と求人の職種名
- 応募した枠(年数条件のある新卒枠/既卒・第二新卒向け/中途の未経験可)
- 締切の有無と締切日
- 募集背景(増員/欠員補充/記載なし)
- 止まった段階(書類/一次/二次以降/日程)
この5項目があれば、10社応募した時点で次に変えるものが決まります。求人票を見た感想ではなく、記載されていた事実を書いてください。
まとめ
既卒の就職は、応募数を増やす前に応募する枠を選び直すところから進めます。職種名を3つまでに絞り、枠を1つ選び、卒業後の期間の説明を1本にまとめてから10社前後応募します。求人票では募集背景、「未経験可」の型、入社時期と配属の決まり方を先に見ます。進まないときは止まっている段階を特定し、枠か職種か説明のうち1つだけ変えてもう一度動かします。
卒業してからの時間が長くなるほど、動き方を変えること自体に気力が要ります。それでも、応募先を増やす前に枠を確認する作業は、机の上で30分あれば終わります。
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よくある質問
Q.既卒の就職で、アルバイト経験は職歴として書けますか
職歴欄は雇用契約のあった就業を書く欄なので、アルバイトも記載できます。応募先の仕事と関係が薄い場合は、職歴欄には在籍期間と職種を短く書き、業務内容の詳細は自己PR欄に回すと読みやすくなります。複数のアルバイトを掛け持ちしていた時期は、期間が重なっていることが分かるように並べてください。
Q.既卒の就職活動中、アルバイトは続けた方がよいですか
続けながら進める人もいます。収入がある状態だと、応募先を焦って決めずに済む面があります。ただし面接の日程調整で選考が止まることがあるため、平日の日中に2枠程度空けられるシフトに変えておくと進めやすくなります。シフトの変更は応募を始める前に申し出ておく方が調整しやすいです。
Q.既卒の就職で複数の内定が出た場合、何を基準に選べばよいですか
給与の差が小さい場合は、入社後の配属先と教育を担当する人が決まっているかを確認してください。配属が入社後に決まる場合は、どの時期にどう決まるのかを聞いておきます。内定の回答期限が異なるときは、期限の早い企業から確認を進めてください。
Q.卒業した学校のキャリアセンターは、既卒になってからも使えますか
卒業生からの相談を受け付けている学校もあります。受付の範囲や期間は学校ごとに違うため、在籍していた学校のキャリアセンターに直接確認してください。使える場合は、求人の紹介だけでなく、卒業後の期間の説明を第三者に読んでもらう用途にも使えます。