既卒という言葉に、どこか後ろめたさを感じてはいないだろうか。新卒で就職先が決まらないまま卒業した人、あるいは就職活動そのものに踏み出せなかった人ほど、その気持ちは強いはずだ。「既卒はもう新卒扱いされない」「既卒は就活で不利になる」といった声を耳にすることも多いだろう。

結論から言えば、既卒者が新卒枠に応募すること自体は、国の指針によって後押しされている制度上の建前がある。もちろん実際の選考でどう扱われるかは企業ごとに異なるが、「既卒だから応募資格すらない」という前提は正しくない。本記事では、既卒の定義、新卒として扱われる根拠、公的統計から見える採用の実態、履歴書作成の考え方を、現役の転職エージェントとしての視点も交えて整理する。

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木村 誠

この記事の著者

木村 誠

人材紹介会社 営業マネージャー/転職の教科書 編集長

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既卒とは何か 卒業後3年以内という基準

「既卒」に法律上の厳密な定義があるわけではないが、行政の統計や指針では「学校卒業後3年以内」という区切りが繰り返し使われている。令和5年若年者雇用実態調査の結果の概況では、新規学卒者について次のように定義している。

新規学卒者:学校卒業後3年以内の者であって、新規学卒者採用枠で採用された者をいう(在学中を除く)。

つまり国の統計上も、卒業後3年以内に採用された人は「新規学卒者」の枠組みに含めて扱われている。一般に「既卒」と呼ばれるのは、この3年以内の期間に正社員としての就職先が決まっていない人を指すことが多い。

ここで注意したいのは、「既卒」と「フリーター」は重なる部分はあるが同じ言葉ではないという点だ。卒業後にアルバイトを続けながら正社員の就職先を探している人は、既卒でありフリーターでもある状態にあたる。既卒からフリーターを経て正社員を目指す道筋については、フリーターから正社員になるには?データで見る就職の実態と成功の条件でも整理しているので、あわせて読んでおくと状況の切り分けがしやすくなる。

既卒者は新卒枠に応募できるのか 青少年雇用機会確保指針の内容

厚生労働省は「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第275号)において、企業に対し既卒者への門戸開放を求めている。

学校等の卒業者についても、学校等の新規卒業予定者の採用枠に応募できるような募集条件を設定すること。当該条件の設定に当たっては、学校等の卒業者が学校等の卒業後少なくとも三年間は応募できるものとすること。

これは努力義務にとどまるものではあるが、「既卒だから新卒枠には応募できない」という思い込みそのものが、指針の内容とは異なるということは押さえておきたい。応募条件は個々の企業の採用方針次第であり、実際に新卒枠で受け付けるかどうかは企業ごとに確認が必要だが、少なくとも国として既卒者の応募機会拡大を促している事実はある。

既卒者を採用する事業所はどのくらいあるのか

労働政策研究・研修機構(JILPT)の資料シリーズNo.266「若年既卒者の雇用動向」(2014〜2020年の雇用動向調査の分析)では、事業所の採用実態について次のように示されている。

上期と下期を分けてみると、7割強の事業所が新卒者を採用し、約3割の事業所が3年以内既卒者を採用していた。上期と下期を合算して年間での比率を算出すると、約6割の事業所が新卒者を採用し、約5割の事業所が3年以内既卒者を採用していたという結果になっている。上期・下期それぞれの比率と年間合算の比率は算出方法が異なるため単純比較はできないが、いずれにしても一定数の事業所が既卒者の採用を行っていることが読み取れる。

同資料では、学歴別の内訳についても言及がある。新卒就職者も3年以内既卒就職者も約半数を大学卒が占めるため、若者全体の雇用動向には大学卒の動向が色濃く反映される一方、性・学歴別に年間の若年入職者に占める3年以内既卒就職者の比率をみると、男女とも高校卒が突出して高いという特徴が示されている。

大学中退という経歴から既卒に近い状況で就職活動を進める人も少なくない。中退者の就職活動の進め方は、大学中退から就職するには?データで見る実態と成功の進め方で個別に整理しているので、あわせて参考にしてほしい。

大学卒業者全体の進路 既卒はどの規模で生まれているのか

既卒者がどの程度の規模で生まれているのかを考えるうえでは、大学卒業者全体の進路状況も参考になる。文部科学省の令和6年度学校基本調査(令和6年3月卒業者が対象)の結果の概要によれば、大学(学部)卒業者に占める就職者の割合は76.5%(前年度より0.6ポイント上昇)、大学院等への進学率は12.6%(前年度より0.1ポイント上昇)となっている。

この2つの数値は大学卒業者全体を対象にしたものであり、既卒者だけを対象にした数値ではない点に注意してほしい。ただし、卒業時点で就職・進学のどちらにも至らない層が一定数存在することは、この2つの比率からもうかがえる。

転職市場全体の求人動向

既卒での就職活動を考えるうえで、労働市場全体の需給感も押さえておきたい。厚生労働省が公表する一般職業紹介状況によれば、令和8年7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月と同水準となっている。これは全国・全産業を対象にした指標であり、既卒者に限定した求人倍率ではないが、求人が求職者を上回る水準で推移していること自体は、既卒者にとって不利ではない環境と言える。

既卒・新卒・第二新卒の違い

言葉の意味が混同されやすい3つの用語を整理しておく。

区分一般的な位置づけ就業経験
新卒卒業前後で初めて就職する人なし
既卒卒業後、正社員としての就職先が決まっていない人なしのケースが多い
第二新卒卒業後に一度就職したものの、比較的短期間で離職・転職活動をする人あり

既卒と新卒の違いをより詳しく整理した内容は、既卒と新卒の違いを整理した記事でも扱っているので、あわせて確認してほしい。

既卒者の履歴書で意識したいポイント

既卒者の履歴書で最も気になるのは、卒業から現在までの空白期間の書き方だろう。以下は実務上の一般的な理解であり、法令で定められた書式があるわけではない。

まず、卒業後の期間を職歴欄で偽ったり省略したりする必要はない。学歴欄に卒業年月を正確に記載したうえで、その後の期間に何をしていたか(就職活動を続けていた、資格取得の勉強をしていた、家庭の事情があったなど)を簡潔に書く欄を設けるのが一般的な対応とされている。アルバイト経験がある場合は職歴として記載するかどうか迷う人も多いが、応募先の求める経験と関連する場合は記載を検討する価値がある。

職歴が全くない場合の書き方については、職歴なしの履歴書の書き方で具体的な記載例を扱っているので参考にしてほしい。

また、志望動機についても「なぜ新卒のタイミングで就職しなかったのか」を聞かれることを前提に準備しておくと選考がスムーズに進みやすい。就職活動を始めるのが遅れた理由や、卒業後の期間に取り組んだことを、応募先の仕事とどうつなげて語れるかを整理しておくことが、書類選考・面接双方での説明のしやすさにつながる。

現場から見える既卒者の就職活動

担当した既卒の求職者(大学卒・卒業後1年未満の20代前半)の傾向として、就職活動を始める時期が遅れるほど、面接で空白期間について説明を求められる回数が増える印象がある。これはあくまで現場での傾向であり、個々の選考結果を保証するものではない。空白期間があること自体を過度に悲観する必要はないが、期間中に何をしていたかを自分の言葉で説明できるように整理しておくことは、選考対策として意味がある。

また、既卒者の相談を受けていると、「新卒で失敗したから今回も同じ結果になるのではないか」という不安を口にする人が一定数いる。気持ちとしては理解できるが、新卒時と既卒での就職活動は、応募できる求人の幅も、自分自身が語れる経験の量も異なる。新卒時にはなかったアルバイトや資格取得の経験がある人であれば、それ自体が既卒ならではの材料になり得る。逆に、これといった行動をしていない期間が長い人ほど、まずは短期間でもいいので何らかの行動歴を作ることを優先したほうがよい、というのが現場での実感だ。

まとめ

既卒者が新卒枠に応募すること自体は、国の指針によって後押しされている。実際に一定数の事業所が既卒者を採用しており、労働市場全体の求人倍率も求人が求職者を上回る水準で推移している。一方で、既卒・新卒・第二新卒という言葉の違いを理解し、空白期間について自分の言葉で説明できるように準備しておくことが、選考を進めるうえでの土台になる。


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Q

よくある質問

Q.既卒とは、卒業後どのくらいの期間を指しますか。
A.

法律上の厳密な定義はないが、行政の統計や指針では「卒業後3年以内」という区切りが目安として使われている。令和5年若年者雇用実態調査でも、新規学卒者を「学校卒業後3年以内の者であって、新規学卒者採用枠で採用された者」と定義しており、卒業後3年というラインが一つの基準になっていることがわかる。

Q.既卒でも新卒枠に応募できますか。
A.

厚生労働省の青少年雇用機会確保指針では、企業に対し卒業後少なくとも3年間は新規卒業予定者の採用枠に応募できる募集条件を設定するよう求めている。ただし努力義務であり、実際に新卒枠で受け付けるかどうかは企業ごとの採用方針によって異なるため、募集要項を個別に確認する必要がある。

Q.既卒と第二新卒はどう違いますか。
A.

既卒は卒業後に正社員としての就職先が決まっていない人を指すことが多いのに対し、第二新卒は卒業後に一度就職したものの比較的短期間で離職し、転職活動をしている人を指す言葉として使われることが多い。就業経験の有無という点で状況が異なる。

Q.既卒者の履歴書で空白期間はどう書けばいいですか。
A.

卒業から現在までの期間を偽ったり省略したりする必要はない。学歴欄に卒業年月を正確に記載したうえで、その期間に何をしていたかを簡潔に書く欄を設けるのが実務上の一般的な対応とされている。アルバイト経験は、応募先の求める経験と関連する場合は記載を検討する価値がある。

Q.既卒は就職活動で不利になりますか。
A.

JILPTの資料シリーズNo.266によれば、上期・下期を合算した年間ベースで約5割の事業所が3年以内既卒者を採用しており、一定数の事業所が既卒者採用を行っている実態がある。また令和8年7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、求人が求職者を上回る水準にある。不利かどうかは個々の選考次第だが、既卒者を採用する土壌自体は存在する。