「大学を中退したあと、自分はどうなるのか」——退学の手続きを終えた直後の方も、これから中退するかを決めようとしている方も、先の見通しが立たないまま時間だけが過ぎていく感覚を抱えていることが多いと思います。
結論から書くと、大学中退のその後は、中退したという事実そのものよりも、中退してからの時間を自分の言葉で説明できる状態にしてあるかどうかで変わっていきます。中退の理由は過去のことなので今から変えられませんが、その後の時間の使い方と整理の仕方は、今日から選べます。
この記事では、中退後の進路がどう分かれるか、最初の3か月で決めておきたい判断軸、退学手続きの時点から何を順番に進めるかを整理します。履歴書の書き方や就職活動そのものの進め方は関連記事に譲り、ここでは「その後をどう組み立てるか」に絞ります。
大学中退のその後を左右するのは、中退理由よりも中退後の時間
選考で問題になりやすいのは、中退の理由が重いことよりも、中退してから今日までの期間について本人の中で整理がついていないことです。転職エージェントとして中退者の相談を受けてきた木村誠の実感でも、中退後の期間を聞かれたときに答えが止まる人ほど、面接の後半で説明が食い違いやすい傾向があります。
ここで言う「説明できる」は、立派な活動をしていたという意味ではありません。アルバイトをしていた、資格の勉強をしていた、体調を整えていた、進路を決めかねて動けずにいた——どれであっても、いつからいつまで、何をしていたのかを並べられる状態を指します。
そのため、中退直後に最初にやることは求人を探すことではなく、中退した年月を起点に、今日までを月単位で書き出すことです。1年以上経ってからこの作業をすると、どの時期に何をしていたかの記憶があいまいになり、面接で答えるたびに時期がずれます。ずれた説明は、事実を隠していると受け取られる原因になります。紙でもスマートフォンのメモでも構わないので、退学の年月から順に、月と出来事だけを並べたものを先に作っておいてください。
大学中退後の進路は大きく3つに分かれる
中退後に取りうる道は、大きく「正社員就職を目指す」「再進学・編入する」「アルバイトを続けながら方向を決める」の3つです。3つ目は消極的な選択に見えますが、実際には多くの人が最初に置かれる状態であり、これを選択肢の一つとして扱えるかどうかで、その後の動き方が変わります。
| 進路 | 向いている状況 | 先に確認すること | 保留したまま時間が経つと起きること |
|---|---|---|---|
| 正社員就職を目指す | 収入を先に安定させたい/やりたい分野が決まっている | 応募したい求人に「学歴不問」「既卒歓迎」「未経験歓迎」の記載があるか | 応募先を絞れないまま数を打ち、志望動機が使い回しになる |
| 再進学・編入する | 学びたい分野が明確/専門資格が必要な職種を志望している | 志望先の募集要項に書かれた出願資格と、在籍していた大学で取得した単位の扱い | 出願時期を逃し、次の募集まで1年単位で待つことになる |
| アルバイトを続けながら決める | 中退直後で判断材料がない/体調や家庭の事情を整えている段階 | 今の勤務先で勤務期間と担当業務を後から説明できるか | 短期の仕事が積み重なり、期間が細切れの経歴になる |
3つのうちどれを本命にするかは、中退後1か月以内に仮決めして構いません。仮決めなので、あとから変更しても問題ありません。決めないまま並行して情報だけ集める期間が長引くと、就職活動も出願準備もどちらも中途半端になります。
正社員就職を選ぶ場合の具体的な進め方は大学中退から就職する進め方で、中退後に正社員として働き始めるまでの流れは大学中退から正社員を目指すときの考え方で整理しています。
大学中退後の最初の3か月で決めておきたい3つの判断軸
判断軸1:空白期間を隠すものとして扱うか、説明するものとして扱うか
学歴や職歴の空白を隠そうとする人ほど、面接で追及されたときに説明が崩れやすい傾向があります。隠すという前提に立つと、質問のたびに「触れられたくない」という態度が出てしまい、それ自体が確認を長引かせます。
先に書いて説明を用意しておく方が、結果として選考は安定します。具体的には、履歴書の学歴欄には退学の事実を年月とともに書き、中退後に何をしていたかは自己PR欄や面接で答える、という役割分担にします。学歴欄そのものの書き方は大学中退の履歴書の書き方で詳しく扱っています。
判断軸2:アルバイトを収入だけで選ぶか、後で説明に使える形で選ぶか
中退後に始めるアルバイトは、時給や通いやすさだけでなく、数か月後に自分の経歴として話せるかどうかで選べます。判断の目安は次の3点です。
- 同じ職場で半年以上続けられそうか:期間が短い仕事を繰り返すと、履歴書上で職歴が細切れになり、何をしていた期間なのかを一言で説明しにくくなります
- 担当範囲を説明できる仕事か:作業の一部だけを担当する仕事より、開店準備から締めまでを任される、新人に手順を教えるといった範囲がある仕事の方が、面接で話せる材料が増えます
- 志望する職種と接点があるか:接客から営業、事務補助から一般事務のように、業務内容が地続きの仕事を選ぶと、未経験枠への応募でも話がつながります
3点すべてを満たす必要はありません。生活を優先して選ぶ時期があってもよく、その場合は「生活を安定させるために選んだ」と説明できる形にしておけば十分です。
判断軸3:再進学の可能性を残すかどうかを先に決めるか
再進学や編入を視野に入れるかどうかは、就職活動を始める前に決めておく方が動きやすくなります。編入の出願資格や、在籍していた大学で取得した単位がどう扱われるかは学校ごとに異なるため、志望先の募集要項で確認してください。問い合わせ先は各校の入試担当窓口です。
「就職活動をしながら受験も考える」という進め方は、時期が重なると準備が分散します。どちらを本命にするかを決めたうえで、もう一方は「本命がうまくいかなかったときに再検討する」という位置づけにしておく方が、説明にも一貫性が出ます。
大学中退のその後についてよくある3つの誤解
| よくある受け止め方 | 実際に起きていること |
|---|---|
| 中退の経歴は一生ついて回るので、その後の行動では変えられない | 学歴欄の記載自体は残りますが、選考で見られる比重は、社会人としての経験が積み上がるにつれて職歴側に移っていきます |
| 中退したことは伝えなければ分からない | 学歴欄に「卒業」と書くことは経歴詐称にあたります。入社手続きの過程で在籍状況の確認が行われる場面があります |
| すぐに動き出さないと取り返しがつかなくなる | 期間の長さより、その期間を説明できる形にしてあるかどうかが問われます。焦って応募を始めると、志望動機が固まらないまま数だけが増えます |
誤解1:中退はその後ずっと不利に働き続ける
中退した直後は、経歴の中で中退が占める割合が大きいため、そう感じやすい状態にあります。ただし、就職して実務の経験が増えていくと、面接で聞かれる内容は「前職で何をしていたか」に移っていきます。中退の事実がなくなるわけではありませんが、聞かれ方は変わっていきます。この点をより詳しく整理した記事として大学中退は人生終了なのかを考えるも用意しています。
誤解2:中退を伏せておけば選考は有利になる
学歴を偽ることは経歴詐称にあたり、入社後に発覚した場合の不利益は、選考段階で正直に書く場合の不利益より大きくなります。在籍していた事実を書いたうえで、退学後に何をしていたかを説明する方が、結果として扱いやすい経歴になります。
誤解3:中退後にブランクがあると応募できる求人がない
求人の条件は企業ごとに異なります。「学歴不問」「既卒歓迎」「未経験歓迎」といった記載がある求人は、職歴や学歴の条件を緩めて募集しているものです。応募先を探すときは、求人票のこの記載を最初に見ることで、対象外の求人に時間を使わずに済みます。
大学中退後にやることを時系列で整理する
退学の手続きをする時点
- 在籍期間(入学年月と退学年月)が記載された書類を発行してもらえるか、その場で窓口に確認する。履歴書の学歴欄は、記憶ではなくこの書類の表記に合わせて書きます
- 奨学金を利用していた場合、返還に関する案内をどこに確認すればよいかを聞いておく
- 学籍がなくなることで健康保険や年金の手続きが必要になる場合があるため、お住まいの市区町村の窓口や、扶養に入っている場合は家族の勤務先の担当部署に確認する
中退後1か月以内
- 中退した年月から今日までを月単位で書き出す
- 3つの進路のうち、どれを本命にするかを仮決めする
中退後1〜3か月
- アルバイトを判断軸2の目安で選び直す(続ける判断でも構いません)
- 応募先が決まっていなくても、履歴書の学歴欄までは書き上げておく
中退後3か月以降
- 求人を「学歴不問」「既卒歓迎」「未経験歓迎」の記載で絞り込む
- 中退理由の説明は応募先ごとに作り分けず、1つ用意して使い回せる形にする。作り分けると、複数社の選考が並行したときに内容がずれます
まとめ
大学中退のその後は、中退という一点で決まるものではなく、そこからの時間をどう扱ったかの積み重ねで形になります。
- 最初にやることは、中退した年月から今日までを月単位で書き出すこと
- 進路は「正社員就職」「再進学・編入」「アルバイトを続けながら決める」の3つ。1か月以内に本命を仮決めする
- 空白期間は隠す対象ではなく説明する対象として扱う
- アルバイトは、期間・担当範囲・志望職種との接点で選ぶと後の説明に使える
- 退学手続きの時点で、在籍期間が分かる書類と、奨学金・保険や年金に関する確認先を押さえておく
今が中退直後でも、中退から数年が経っていても、着手する順番は変わりません。今日までの時間を書き出すところから始めてみてください。
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よくある質問
Q.大学を中退したことは、応募した企業に書類で分かってしまいますか?
応募の段階で在籍証明の提出を求められることは多くありませんが、内定後や入社手続きの過程で学歴に関する書類の提出を求める企業はあります。履歴書の記載と書類の内容が食い違うと、内定取り消しの理由になり得ます。学歴欄には在籍していた事実と退学の年月をそのまま書いてください。
Q.中退した大学の名前は履歴書に書かなければいけませんか?
学歴欄は入学と退学の事実を記載する欄なので、学校名と学部・学科名まで書き、末尾に中途退学であることを記載します。学校名を伏せると在籍していた期間の説明がつかなくなり、面接で改めて確認されることになります。
Q.中退後にアルバイトしかしていない期間は、職歴欄に書いてよいですか?
職歴欄は雇用形態を明記したうえでアルバイト経験を記載する方法と、職歴欄には書かず自己PR欄や職務経歴書でアルバイト経験としてまとめる方法があります。どちらの場合も、勤務期間と担当していた業務を答えられるようにしておくことが前提になります。
Q.中退して1年以上経ってから就職活動を始めるのは遅すぎますか?
経過した期間そのものよりも、その期間に何をしていたかを説明できるかどうかが問われます。空白が長い場合は、時期ごとに何をしていたかを月単位で書き出し、事実として並べられる状態にしてから応募を始めてください。
Q.家族に中退を反対されていて、その後の進路を相談できる相手がいません。
無料で利用できる公的な就職相談の窓口があります。おおむね35歳未満を対象としたわかものハローワークや、一般のハローワークの相談窓口では、進路が決まっていない段階でも相談できます。家族以外に話す相手を作っておくと、判断を先送りしにくくなります。