「転職したいが、年収が下がったらどうしよう」——転職を検討するとき、多くの人が最初に抱く不安です。
実際のところ、転職で年収が下がる人は一定数存在します。しかし、その割合・下がる理由・回避方法を正確に把握している人は多くありません。感覚的な不安を持ったまま判断することが、むしろリスクを高めます。
この記事では、転職で年収が下がる人の割合をデータで確認し、年代別の実態・主な原因・リスクを最小化するための対策を整理します。
転職で年収が下がる人の割合
厚生労働省統計による実態
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、転職者の賃金変化の分布は次の通りです。
| 賃金変化 | 割合 |
|---|---|
| 増加した | 46.8% |
| 同水準 | 25.9% |
| 減少した | 26.2% |
約4割が年収アップを実現している一方、約4人に1人が年収ダウンを経験しています。
民間調査による年代別ダウン率
doda転職動向調査2024では、転職後の年収変化として年収アップ43%・ダウン35%・同水準22%という結果が示されています。
調査によって数値に差がありますが、約3〜4割程度の転職者が年収ダウンを経験するというのが複数の調査に共通する傾向です。
年代別の年収ダウン率の実態
年収ダウンの実態は年代によって大きく異なります。dodaの調査データをもとに年代別の傾向を整理します。
| 年代 | 年収ダウンの傾向 | 平均ダウン額の目安 |
|---|---|---|
| 20代 | 比較的少ない | 約40万円 |
| 30代 | 中程度 | 50〜80万円程度 |
| 40代以降 | 高い | 100万円以上のケースも |
20代の年収変動傾向
20代は転職市場でポテンシャル採用として扱われるため、年収ダウンのリスクは他世代と比べて低い傾向があります。dodaのデータでは20代転職者の年収変動は2019年度上期比113%と、中長期では上昇傾向にあります。年収がダウンする場合でも約40万円程度にとどまるケースが多く、2〜3年での回復も比較的見込みやすい世代です。
20代の転職で年収が下がるケースの詳細については別記事で解説しています。
30代の年収変動傾向
30代は職務経験と成果実績が問われる世代です。異業種転職や企業規模の縮小を伴う転職では50〜80万円程度のダウンが生じるケースがあります。一方で、専門スキルを活かした転職や成長業界への移動では年収アップ率も高く、準備の質が結果を大きく左右する年代といえます。
40代・50代の年収ダウン率
40代以降は年収ダウンのリスクが最も高い世代です。管理職経験が転職先でも認められないケースや、業界水準そのものが低い職種への転身では100万円以上のダウンが報告されています。厚生労働省「令和2年転職者実態調査」でも年齢が上がるほど転職による賃金ペナルティが大きくなる傾向が確認されています。
転職で年収が下がる主な理由
異業種・異職種への転職
これまでの経験・スキルが評価されにくい業界・職種への移動では、ベース給与が下がるケースが多くあります。学習コストを転職先が負担する分、入社時の給与は抑えられる構造になりやすいためです。
企業規模の変化
大企業から中小企業への転職は、給与テーブルの差から年収ダウンにつながりやすい典型的なパターンです。ただし、裁量の大きさ・成長スピード・将来の収入ポテンシャルという観点では評価できる側面もあります。
ポジション・役職の変化
管理職から一般職への転換、専門職からゼネラリストへの転換は、役職手当の喪失により年収が下がるケースがあります。特に40代以降で役職者だった場合、このパターンによるダウン額が大きくなりやすいです。
交渉不足による低評価
市場相場を把握せずに提示額をそのまま受け入れることで、本来獲得できた年収より低い水準で入社するケースが一定数あります。年収交渉は入社前の最大のチャンスであり、相場を知らずに行動することが損失の根本原因になります。
転職と生涯賃金の関係
正社員継続と転職経験者の生涯賃金差
転職が生涯賃金に与える影響は、転職のタイミングと方向性によって大きく異なります。中央調査社の転職回数と生涯賃金に関する研究によると、転職1回で生涯賃金が+1,200万円になるケースがある一方、年収ダウン転職を複数回繰り返すと−1,000万円以上の損失になるケースもあります。
転職と生涯年収の関係については別記事で詳しく解説しています。
転職回数と生涯所得の関係
一般的に、転職回数が多いほど生涯賃金が下がるという通説がありますが、これは転職の質によって大きく異なります。成長業界への戦略的な転職を複数回行った場合は、同一企業に在籍し続けた場合より生涯収入が高くなるケースもあります。
重要なのは「転職回数」ではなく「各転職で市場価値を高める方向に動けたかどうか」です。
転職失敗を長期的損失に変えないための考え方
NIRA政策研究レポートは日本の転職市場の構造的課題について、次のように指摘しています。
「日本の労働市場は転職に対して構造的な賃金ペナルティを内包しており、政策的な支援が求められる」
(出典:NIRA政策研究レポート)
この構造を理解した上で、**「転職時の年収ダウンを一時的なコストとして許容する場合でも、回復シナリオを事前に設計する」**ことが重要です。
転職・年収ダウン事例のケーススタディ
失敗事例:準備不足による年収ダウンとその後
Aさん(35歳・男性・製造業)のケース
- 転職前:大手メーカー勤務・年収680万円・部長職
- 転職先:中規模IT企業・年収520万円(▲160万円)
- 原因:製造業での管理職経験がIT企業では評価されにくく、ポジションが一段下がった
- 年収回復:転職から5年後に年収630万円まで回復(転職前水準にはまだ届いていない)
Bさん(42歳・女性・金融業)のケース
- 転職前:銀行勤務・年収720万円
- 転職先:中小企業の経理・年収480万円(▲240万円)
- 原因:ワークライフバランス改善を優先したが、銀行スキルが中小企業では過剰スペックと評価された
- 年収回復:転職3年後に年収550万円(まだ転職前の水準より170万円低い)
成功事例:市場価値を把握して年収アップにつなげたケース
Cさん(29歳・男性・ITエンジニア)のケース
- 転職前:SIer勤務・年収480万円
- 準備:doda年収査定で市場価値540〜600万円と確認・複数エージェントでデータ取得
- 転職先:Webサービス企業・年収600万円(+120万円)
- 成功要因:相場を把握した上で交渉・複数の内定を比較材料に使った
Dさん(38歳・女性・人事)のケース
- 転職前:中堅企業の人事マネジャー・年収550万円
- 準備:転職エージェントとの面談で市場価値を確認・HR Tech領域のスキルを追加習得
- 転職先:急成長スタートアップのHRBP・年収650万円(+100万円)
- 成功要因:需要の高い領域にスキルを組み合わせて市場価値を高めてから転職した
年収を下げないための準備と対策
自分の市場価値を客観的に把握する
最も重要な準備は現年収が市場相場と比べて高いのか低いのかを把握することです。相場を知らないまま転職すると、低い提示額を適正と誤認して受け入れるリスクがあります。
doda年収査定・マイナビエージェント年収診断など複数のツールを組み合わせて相場を確認し、エージェント面談でプロの目線を加えることで精度が上がります。
業界・職種の年収相場を調べる
転職先の業界・職種の年収水準を事前に把握することも重要です。国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」によると日本の平均給与は478万円ですが、業界・職種による差は数百万円規模に及びます。
自分の経験・スキルがその業界でどう評価されるかを、求人票の年収レンジと照らし合わせて確認することが基本的な準備です。
転職エージェントの活用
エージェントは年収交渉の代行・非公開求人へのアクセス・業界の採用基準に関する情報提供という3点で、独力での転職活動より有利な条件を引き出しやすくなります。複数のエージェントに登録して比較することで、担当者の質と求人の幅を確保できます。
年収ダウンを許容できる範囲については転職 年収 下がる 許容範囲の記事も参考にしてください。
年収が下がっても転職すべきケース
長期的に見た年収回復の可能性
入社時の年収が下がっても、2〜3年で回復・超過が見込める転職は合理的な選択です。具体的には、成長業界への転身・希少スキルが習得できるポジション・インセンティブ型の報酬設計がある職種などが該当します。
年収以外の価値(労働環境・キャリア形成)
年収100万円ダウンでも月の残業時間が50時間減少するなら、時給換算では実質的に改善している場合があります。また、5年後の市場価値向上を見込んだ経験の蓄積は、目先の年収ダウンを上回るリターンになるケースもあります。
健康・生活の質を重視する判断
健康状態の悪化・家族との時間不足・精神的ストレスが深刻な場合、年収ダウンを受け入れてでも環境を変える判断は合理的です。ただし、生活設計への影響は事前にシミュレーションしておく必要があります。転職で年収が下がって後悔するケースの多くは、転職後の後悔の記事が示す通り、事前の許容ラインを決めていなかった場合です。
転職後の年収回復にかかる期間
業種別の年収回復ペース
| 転職パターン | 回復期間の目安 |
|---|---|
| 同業種・同職種への転職 | 1〜2年 |
| 成長業界への転身(スキル活用) | 2〜3年 |
| 異業種・未経験転職 | 3〜5年以上 |
| ポジションが下がった転職 | 5年以上のケースも |
長期的に年収を回復させる要素
年収回復を早める主な要因:
- 需要の高い業界を選んでいる:成長業界では昇給ペースが速い
- 希少なスキルを習得する機会がある:スキルアップが市場価値向上に直結
- 入社後の実績を数値化して社内交渉できる:成果主義の企業では自律的な年収回復が可能
政策研究に見る転職・賃金の実態
NIRA政策研究による賃金格差構造
NIRA政策研究レポートは、日本の転職市場における賃金ペナルティの構造的問題を指摘しており、同一企業での継続雇用が報酬面で有利になりやすい日本の雇用慣行が、転職による賃金低下を促進している面があるとしています。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究でも、年収減少経験者には転職後の後悔傾向が強く、準備の有無が転職の満足度に大きく影響することが示されています。
OECD国際比較から見る日本の課題
OECD統計によると、日本の男女賃金格差は21.3%で韓国・エストニアに次ぐ3位です。転職による年収ダウンリスクは女性においてさらに顕著になるケースがあり、職種・雇用形態の選択に加えて市場価値の事前把握がより重要になります。
DIAMOND HR Reportの年収動向分析でも、転職市場全体として優秀人材の確保競争が激化しており、準備した転職者と準備しなかった転職者の年収差が拡大傾向にあることが報告されています。
まとめ
転職で年収が下がる人の割合は調査によって異なりますが、概ね25〜35%という水準です。ただし、年収ダウンは不可避ではなく、事前の市場価値把握・相場調査・エージェント活用によって大幅にリスクを低減できます。
年代別に見ると、20代は年収ダウンリスクが低く回復も早い傾向がある一方、40代以降は下がり幅が大きく回復に時間がかかるケースがあります。これは転職を急ぐほど良いという意味ではなく、早い段階で市場価値を把握し、必要なスキルを積み上げておくことが長期的な賃金損失を防ぐことを示しています。
年収ダウンを恐れて転職を先送りすることが最善策とは限りません。準備を整えた上で、データに基づいた判断をすることが、後悔のない転職への近道です。
転職前に自分の市場価値と適正年収を把握しておきましょう。無料の診断ツールをお試しください。
よくある質問
Q.転職で年収が下がる人はどれくらいいますか?
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」では転職者の26.2%が転職後に賃金が減少しています。dodaの転職動向調査2024では35%が年収ダウンを経験しており、エン人事のミカタ調査でも35%が「年収が下がった経験あり」と回答しています。調査によって差がありますが、約3〜4割程度の転職者が年収ダウンを経験するという傾向は複数の調査で一致しています。
Q.転職で年収が下がる主な原因は何ですか?
主な原因は4つです。①異業種・異職種への転職(経験が評価されにくい)、②企業規模の縮小(大手から中小へ)、③ポジション・役職の変化(管理職から一般職へ)、④年収交渉の不足(相場を把握せずに提示額を受け入れる)。特に40代以降は管理職経験が次の職場でも認められないケースがあり、年収ダウンの金額が100万円以上になる事例も報告されています。
Q.転職後に年収は回復しますか?
業種・職種・転職の理由によって大きく異なります。成長業界への転職や専門スキルを活かした移動では2〜3年で転職前を上回るケースが多くあります。一方、業界水準が低い職種への転職や、スキルのミスマッチがある場合は回復に5年以上かかるケースもあります。長期的な年収回復については転職生涯年収の記事で詳しく解説しています。
Q.年収が下がっても転職すべきケースはありますか?
あります。主に3つのケースが考えられます。①労働環境が著しく改善される(残業大幅削減・リモートワーク導入など)、②長期的な年収アップが見込める業界・職種への転身、③健康・家族との時間など金銭以外の優先事項がある場合。許容できる年収ダウンの範囲については別記事で詳しく解説しています。
Q.転職で年収を下げないための最も重要な準備は何ですか?
最も重要なのは「自分の市場価値を事前に把握すること」です。現年収が市場相場と比べて高いのか低いのかを知らなければ、提示された年収が適正かどうかの判断ができません。doda年収査定・マイナビエージェント年収診断・転職エージェントとの面談を組み合わせて、複数の情報源で相場を確認することが有効です。