「転職すると生涯年収はどうなるのだろう」——今の職場に留まるべきか転職すべきか迷うとき、目先の年収だけでなく長期的な影響が気になるのは当然のことです。

転職で一時的に年収が上がっても、その後の昇給ペースや退職金・年金への影響を考えると、本当に得なのかどうか分からない。そんな不安を持つ方は少なくありません。この記事では、転職が生涯年収に与える影響を複数のデータから整理し、長期的な視点でのキャリア判断を考えます。

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木村 誠

この記事の著者

木村 誠

人材紹介会社 営業マネージャー/転職の教科書 編集長

転職支援実績 1,500名以上

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転職すると生涯年収はどう変わるのか

まず、転職による年収変動の実態を確認します。

マイナビ「転職動向調査2026年版」によると、転職後の平均年収は533.7万円で、転職前の514.5万円と比べ+19.2万円の増加となっています。20代に限ると増加額は+21.5万円と、若い世代ほど転職による年収アップ効果が大きい傾向があります。

また内閣府の2023年の分析では、29歳以下の転職者で賃金が1割以上増加した割合は約37%、1割以上減少したのは約12%でした。若年層では年収アップが年収ダウンを大きく上回っています。

一方で、生涯年収という観点では単年の年収変動だけでなく、昇給ペース・退職金・企業年金・キャリアの継続性も影響します。JILPT「ユースフル労働統計2022」では職種・学歴別の生涯賃金が示されており、同じ職種でも企業規模や勤続年数によって数千万円単位の差が生じることが分かります。

転職が生涯年収にプラスに働くかどうかは、転職後の年収水準だけでなく、その後のキャリアの積み上げ方に大きく依存します。

転職回数・タイミングと生涯年収の関係

転職の回数やタイミングも、生涯年収に影響します。

厚生労働省「令和2年転職者実態調査」では、転職者の賃金変動状況が詳細に分析されており、転職回数が増えるにつれて年収アップの割合が変化する傾向が示されています。

また、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」による年齢別・職種別の賃金分布を見ると、年収のピーク年齢は職種によって大きく異なり、専門職・管理職では50代まで上昇し続けるケースがある一方、現場系職種では40代前半でピークを迎えやすいことが分かります。

これらのデータから、転職回数・タイミングについて次の傾向が見えます。

転職のパターン生涯年収への影響
20〜30代の戦略的転職年収ベースが上がり、その後の昇給も高水準になりやすい
40代以降の転職年収ダウンリスクが高く、回復に時間がかかりやすい
短期間での転職繰り返し評価が下がり、交渉力が弱まるリスクがある
スキルを積んだ上での転職市場価値が高い状態での移動となり、年収アップしやすい

若いうちに戦略的に転職し、年収のベースラインを引き上げることが、生涯年収の最大化において有効な方針のひとつといえます。

リスキリングが生涯年収に与える影響

転職と並んで生涯年収に大きく影響するのが、**リスキリング(学び直し)**です。

マイナビ「転職動向調査2024年版」によると、リスキリング経験ありの転職者の平均年収は559.3万円で、経験なしの419.5万円と比べて139.8万円の差があることが分かっています。年収差139.8万円が仮に10年続けば、生涯年収への影響は1,000万円超に達する計算になります。

リスキリングが年収に直結しやすいスキル領域は、需要が高く供給が追いついていない分野です。

  • AI・データサイエンス:活用できる人材の希少性が高く、年収プレミアムが発生しやすい
  • ITセキュリティ:企業の投資が拡大しており、専門家の不足が続いている
  • プロジェクトマネジメント:経験との掛け算で価値が上がりやすい

転職単体で年収を上げるよりも、スキルアップと転職を組み合わせることで生涯年収への効果は大きくなります。

生涯年収を最大化するための転職戦略

上記のデータを踏まえると、生涯年収を最大化するための転職戦略は次のように整理できます。

1. 転職は早い段階で経験する

20〜30代の転職は年収アップ効果が高く、その後の昇給ベースも上がりやすいです。キャリアの早い段階で市場価値を確認し、必要であれば動くことが有効です。

2. スキルを身につけてから転職する

リスキリング後の転職者と未経験の転職者の間には平均139.8万円の年収差があります。転職を検討しているなら、並行してスキル習得に取り組むことが長期的なリターンを高めます。

3. 転職市場での自分の価値を定期的に確認する

市場価値は業界動向やスキルの希少性によって変動します。転職する・しないにかかわらず、定期的に自分の市場価値を把握しておくことで、適切なタイミングで行動できるようになります。

4. 年収だけでなく将来の昇給ポテンシャルで選ぶ

入社時の年収が低くても、成長性の高い企業・職種では数年で逆転することがあります。**現在の年収より「3〜5年後の年収シナリオ」**で比較することが生涯年収の観点では重要です。

なお、転職による年収変動の実態については別記事で詳しく解説しています。

まとめ

転職が生涯年収にプラスに働くかどうかは、転職のタイミング・スキルの有無・転職後のキャリアの積み上げ方によって大きく変わります。データが示すのは、若い世代・リスキリング経験者ほど転職による年収アップ効果が大きいという傾向です。

目先の年収変動だけに注目するのではなく、長期的な視点でキャリアを設計すること。そのためにも、まず現在の市場価値を客観的に把握することが出発点となります。


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