「自分の年収って、20代の中央値と比べてどうなんだろう」——給与明細を見るたびに、そんな疑問が頭をよぎる方は少なくありません。

平均年収は調べれば出てきます。しかし、「平均より低い」と分かっても、それが多数派なのか少数派なのかは平均だけでは判断できません。より実態に近い指標として注目されているのが中央値です。

ただし、ここで一つ正直にお伝えしなければならないことがあります。厚生労働省や国税庁などの公的統計では、20代の年収中央値は直接公表されていません。民間調査を見ても、doda集計では384万円、my-bestの独自調べでは310万円と、70万円以上の乖離があります。

この記事では、こうしたデータの限界を誠実に示した上で、複数の数値を並記しながら20代の年収実態を読み解きます。自分のポジションを客観的に把握するための材料として活用してください。

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木村 誠

この記事の著者

木村 誠

人材紹介会社 営業マネージャー/転職の教科書 編集長

転職支援実績 1,500名以上

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年収における「中央値」と「平均値」の違い

平均値の特徴

平均値とは、全員の年収を合計して人数で割った値です。計算がシンプルで理解しやすい反面、一部の高所得者の影響を強く受けるという特徴があります。

例えば、5人の年収が300万円・300万円・300万円・300万円・1,800万円だったとします。

  • 合計:3,000万円
  • 平均値:3,000万円 ÷ 5人 = 600万円

5人中4人は300万円なのに、平均値は600万円と2倍になります。これが「平均値は高所得者に引っ張られる」という構造です。年収分布が右に偏っている(高所得者が少数ながら存在する)場合、平均値は多数派の実態より高めに出ます。

中央値の特徴

中央値とは、全員を年収順に並べたときにちょうど真ん中に位置する人の年収です。上の5人の例では、300万円が中央値になります。

中央値は少数の高所得者に影響されないため、「多数派の実態」をより正確に反映します。自分が全体の中でどのくらいの位置にいるかを知りたい場合、中央値の方が実用的な指標です。

なぜ平均値より中央値が低くなるのか

「平均値は一部の高所得者が押し上げているため、中央値は平均値より低くなることがある」

これは大和総研が「中央値と平均値の違い」に関するレポートで示した見解です。同レポートによれば、男性の平均値406.1万円に対して中央値は393.7万円、女性の平均値366.2万円に対して中央値は357.5万円と、いずれも中央値が平均値を下回っています。

指標男性女性
平均値406.1万円366.2万円
中央値393.7万円357.5万円
差(平均−中央値)12.4万円8.7万円

(出典:大和総研)

この差こそが、「平均と比べて低い気がする」という実感の正体です。多くの人の年収は平均より低い位置にあり、それは異常なことではなく、統計的に当然の構造なのです。

20代の年収中央値(民間調査データ)

doda集計による20代の中央値

neo career / dodaの集計(約60万人のデータ)によると、20代の年収中央値は384万円で、男性430万円・女性350万円という結果が出ています。

このデータはdodaに登録した転職希望者を母集団としているため、転職意欲のある層・正社員比率が高い集団のデータという点を念頭に置く必要があります。

他の民間調査による中央値

my-bestの独自調べでは、20代全体の年収中央値は310万円(男性350万円・女性300万円)とされており、doda集計との差は74万円に達します。

my-bestはこの数値について、「20代は社会人としてスタートを切ったばかりの人が多く、役職や昇給がまだ少ないため、差が生じにくい」と説明しています。310万円という数値は、非正規雇用者や初年度の新卒なども含む広い集団を反映している可能性があります。

調査20代全体男性女性集計母集団の特徴
doda集計384万円430万円350万円転職希望者約60万人
my-best独自調べ310万円350万円300万円広範な就労者層

データが乖離する理由

2つの調査で74万円もの差が生じる理由は、集計母集団の違いに尽きます。

  • doda集計:転職サービスに登録した、転職意欲のある正社員中心の層。一般的に年収意識が高く、現年収も比較的高め
  • my-best集計:幅広い年齢層・雇用形態・業界を含む。パートタイムや非正規雇用者も含まれる可能性がある

つまり、どちらが「正しい」ということではなく、自分がどちらの集団に近いかによって、参照すべき数値が変わります。正社員として転職市場に参加しているなら前者が、より広い意味での20代全体の傾向を知りたいなら後者が参考になります。

公的統計から見える20代の年収水準

国税庁の平均給与データ

公的データとして信頼性が高いのは国税庁と厚生労働省の統計です。国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」によると、全体の平均給与は478万円となっています。

ただし、この数値は全年齢・全雇用形態・全業界の平均であり、20代に絞った平均は大幅に下がります。前述の通り、20代前半は222万円・20代後半は326万円(国税庁調査)が目安です。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」でも年齢別・性別・雇用形態別の賃金データが公表されており、自分の条件(年齢・性別・業種)に近いデータを確認することで、より実態に近い相場感が得られます。

雇用形態別の給与差

年収水準に最も大きな影響を与える要因の一つが雇用形態です。国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」では、正社員の平均年収は545万円、非正規は206万円と約340万円の開きがあります。

同じ20代でも、正社員と非正規では年収水準が大きく異なります。自分の年収を相場と比較する際は、必ず同じ雇用形態のデータと照合することが重要です。

男女別の給与差

同調査では、男性の平均年収587万円・女性の平均年収333万円と、254万円の差があります。20代でも同様の傾向があり、大和総研のデータでも男女の中央値には差が見られます。

区分平均年収(国税庁2024年)
全体478万円
正社員545万円
非正規206万円
男性587万円
女性333万円

この差の背景には、業種・職種選択の傾向や、育児・介護による就業形態の変化など複数の要因があります。男女別の相場を把握することで、自分のポジションがより明確になります。

20代の年収中央値を読み解くポイント

自分の属性に近いデータを選ぶ

前述の通り、20代の年収中央値は調査によって310万円〜384万円と幅があります。この幅をどう解釈するかは、自分がどの集団に近いかによって変わります。

自分のポジションを確認するには、次の条件を揃えた比較が有効です。

  • 年齢層:20〜24歳か25〜29歳か
  • 性別:男女別データとの比較
  • 雇用形態:正社員か非正規か
  • 業種・職種:同業界のデータとの比較

条件を揃えずに全体平均や中央値と比較しても、正確な判断はできません。

中央値だけでは判断しきれない理由

中央値を把握することは有益ですが、それだけでキャリアの判断を下すのは早計です。理由は2つあります。

第一に、中央値はある時点のスナップショットにすぎません。20代前半の中央値310〜384万円という数字は、キャリアのスタート地点の実態を示しているだけで、3〜5年後の自分の年収とは直接関係しません。

第二に、中央値は業界・職種・企業規模によって大きく変わります。IT・金融・コンサルティングといった高年収業界では、20代でも中央値を大幅に上回るケースが多くあります。全体の中央値と比べるより、同業界・同職種の相場との比較の方が現実的な判断材料になります。

「平均値は一部の高所得者が押し上げているため、中央値は平均値より低くなることがある」という大和総研の指摘が示す通り、どの指標を使っても「多くの人はその数字より低い位置にいる可能性が高い」という前提で読むことが重要です。

(出典:大和総研「中央値と平均値の違い」)

中央値を超えるための行動指針

業種・職種選びの重要性

20代で年収中央値を上回る最も確実な方法は、年収水準の高い業種・職種を選ぶことです。同じ20代でも、業界によって年収相場は数百万円単位で異なります。

年収が高い傾向にある業種・職種の例:

  • ITエンジニア・データサイエンティスト:需要が高く、スキル次第で20代でも600万円超が狙える
  • 金融・投資銀行・コンサルティング:基本給が高く、インセンティブ加算もある
  • 営業職(インセンティブ型):成果が直接収入に反映される

一方で、サービス業・小売業・一部の事務職は業界全体の給与水準が低めで、中央値を上回るハードルが高くなります。

現職の業界がこれに該当する場合、スキルアップや転職によって業種を変えることが中央値を超える現実的なルートになります。

自分の市場価値を客観的に把握する

どれだけ相場データを調べても、自分が転職市場でどう評価されるかを把握しなければ、判断は感覚的になります。

現年収が市場相場より高いのか低いのかを知ることで、以下の判断が具体化されます。

  • 現職に留まる場合:昇給交渉の根拠を持てる
  • 転職する場合:適正な年収を提示できる・低めの提示を受け入れずに済む
  • スキルアップ投資の判断:市場価値への影響を逆算できる

診断ツールやエージェントとの面談を活用し、数字で自分の立ち位置を把握することが、感覚論ではない判断の出発点になります。

まとめ

20代の年収中央値について整理すると、次のようになります。

  • 公的統計(厚生労働省・国税庁)では20代の中央値は直接公表されていない
  • 民間調査では310万円(my-best)〜384万円(doda集計)と乖離がある
  • 乖離の主因は集計母集団の違いであり、どちらが正しいかではなく自分がどちらの集団に近いかで参照先を選ぶべき
  • 業種・職種・雇用形態・性別によって実態は大きく異なる
  • 中央値との比較は出発点であり、自分の市場価値を把握して次のアクションにつなげることが重要

データは判断の材料であり、目的ではありません。中央値との比較をきっかけに、自分のキャリアを客観的に見直すことが長期的な年収向上につながります。

Q

よくある質問

Q.20代の年収中央値はいくらですか?
A.

民間調査によって数値が異なります。doda集計(約60万人データ)では20代の年収中央値は384万円(男性430万円・女性350万円)、my-bestの独自調べでは20代全体で310万円(男性350万円・女性300万円)と報告されています。公的統計(厚生労働省・国税庁)では20代の中央値は直接公表されていないため、民間調査データを参考にする際は集計母集団の違いを考慮することが重要です。

Q.年収の平均値と中央値はどう違いますか?
A.

平均値は全員の年収を合計して人数で割った値で、一部の高所得者の影響を受けて実態より高くなる傾向があります。中央値は全員を年収順に並べたときに真ん中に位置する人の年収で、高所得者の影響を受けにくく実態に近い指標です。大和総研の分析では、男性の平均値406.1万円に対して中央値は393.7万円と低く、女性も平均値366.2万円に対して中央値357.5万円とやや低い結果が示されています。

Q.20代の年収中央値に公的なデータはありませんか?
A.

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」や国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」は年齢別・性別・雇用形態別の平均賃金データを公表していますが、年収の中央値は直接公表していません。このため、20代の中央値を知るには民間調査データを参考にするほかなく、調査ごとに集計母集団が異なるため数値に乖離が生じます。

Q.20代で年収中央値を超えるにはどうすればよいですか?
A.

業種・職種の選択が最も大きな影響を与えます。IT・金融・コンサルティングなど平均年収が高い業界を選ぶことで、同じ年齢でも年収水準が大きく変わります。また、スキルアップや転職による市場評価の向上も有効です。まずは診断ツールや転職エージェントを活用して自分の市場価値を客観的に把握し、相場との乖離を確認することが第一歩です。

Q.雇用形態によって20代の年収はどれくらい違いますか?
A.

国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」によると、正社員の平均年収は545万円、非正規は206万円と約340万円の差があります。20代でも同様の傾向があり、正規・非正規の違いは年収水準に大きく影響します。自分の年収を相場と比較する際は、同じ雇用形態のデータと照合することが実態に近い判断につながります。