「市場価値を高めたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」——転職を意識し始めた多くの人が、最初にぶつかる壁です。
今のスキルで転職市場に通用するのか、どんな努力をすれば評価が変わるのか。漠然とした不安はあるのに、具体的な行動に移せないまま時間だけが過ぎていく。そんな方に向けて、この記事ではデータに基づいた市場価値の高め方5つを解説します。
市場価値を構成する要素とは
市場価値の5つの要素
市場価値とは、労働市場においてあなたのスキル・経験がどれだけの対価で評価されるかを示すものです。これは主に次の5つの要素で構成されます。
- 専門スキル:特定分野の技術力・知識・資格
- 経験:業務範囲・マネジメント経験・プロジェクト規模
- 成果の言語化:定量的に示せる実績
- ポータブルスキル:業界を問わず通用する汎用能力
- 市場の需要:そのスキルが今どれだけ求められているか
国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」によると民間の平均給与は477.5万円です。この水準を基準に、自分がどの位置にいるかを意識するとよいでしょう。
スキルと市場需要の交差点
重要なのは、「自分が持つ能力」と「市場の需要」が交差する領域でこそ市場価値は高まるという点です。どれだけ高度なスキルでも需要がなければ評価につながりません。逆に、需要の高い領域でスキルを磨けば効率的に市場価値を上げられます。
現在の市場価値を把握することが出発点です。市場価値の診断方法については別記事で詳しく解説しています。
市場価値を上げる5つの方法
方法1:需要の高いスキルをリスキリングで身につける
リスキリング(学び直し)は市場価値を上げる最も直接的な方法のひとつです。人事の図書館の調査によると、約40%の企業がリスキリングを実施しており、上位スキルは「AI活用」「セキュリティ」「ITプロジェクトマネジメント」とされています。
また、IT系専門職ではリスキリング希望割合が49.4%で最も高いというJILPTのデータもあります。専門職ほど学び直しの重要性を認識していることが分かります。
スキルアップ研究所の調査でも次のような知見が示されています。
「リスキリングはキャリアにポジティブな影響を与えている」
(出典:スキルアップ研究所)
同調査ではリスキリングで75%が能力向上を実感しており、体感としての効果も数字で裏付けられています。
方法2:テクニカルスキルを習得しアピールする
専門的な技術スキルは転職市場で強力な武器になります。スキルアップ研究所の調査では、転職活動でテクニカルスキルをアピールした転職者の85%以上が「評価された」と回答しています。
単にスキルを持つだけでなく、それを具体的な成果とともに言語化して伝えることが評価につながる鍵です。スキルの習得と言語化をセットで進めることが、転職市場での評価を高めます。
方法3:資格を取得して専門性を可視化する
資格は、スキルを第三者に客観的に証明する手段です。CBTソリューションズの調査によれば、資格取得により年収が増加したと回答した人は57.7%にのぼります。
CBTソリューションズ「2026年版資格ランキング」では、就職・転職に役立つ資格は日商簿記が6年連続1位で、デジタル・IT系資格の評価が上昇しています。
安定需要の資格にIT・デジタル領域を掛け合わせることで、希少性が高まります。
方法4:実務での成果を数値化して言語化する
この方法は、スキル習得と並行して今日から取り組める点が特徴です。転職市場での自己アピールにおいて、「何ができるか」を証明するのに最も説得力があるのが数字による実績です。
実績の数値化の例:
- 「営業成績を改善した」→「前年比120%の売上を達成した(担当エリア12名中1位)」
- 「業務効率化に取り組んだ」→「月次報告書の作成時間を8時間から3時間に短縮した」
- 「チームをまとめた」→「6名のチームのリーダーとして、期末目標を3か月前倒しで達成した」
数値化できる要素には、売上・削減率・時間・順位・件数・人数・コストなどがあります。現職の業務で意識的に記録をつける習慣が、転職市場でのアピール力を高めます。
マイナビ転職の調査では、リスキリング経験ありの転職前後年収差は+25.1万円・経験なし+8.1万円と約3倍の差があります。同様に、実績を言語化できているかどうかも年収交渉の結果に直結します。
方法5:副業・複業でスキルの幅を広げる
副業・複業は現職では経験できない業務領域のスキルを積む手段として、市場価値向上に有効です。特に次の2点で他の方法と異なる価値があります。
成果物が実績になる:学習と違い、副業では実際の仕事として成果物が生まれます。ポートフォリオ・納品実績・取引先からの評価が面接でのアピール材料になります。
別の業界・職種のスキルが身につく:本業がバックオフィス系でもWebデザインやコーディングの副業経験があれば、転職先の選択肢が広がります。
ただし、副業の可否は雇用契約で制限されるケースがあります。就業規則を確認した上で取り組むことが前提です。
リスキリングが市場価値に与える効果(ケーススタディ)
リスキリング経験者と非経験者の年収差
マイナビ転職「正社員のリスキリング実態調査(2023年)」によると、リスキリング経験ありの平均年収は559.3万円・経験なし419.5万円で、差額は139.8万円に達します。
転職前後の年収変動でも差があります。同調査では経験あり+25.1万円・経験なし+8.1万円と、リスキリング経験者は非経験者の約3倍の年収アップを実現しています。
Work-Strategyの調査では、年収1,000万円以上の高年収層のリスキリング実施率は約50%で、500万円未満層の17.8〜38.6%を大きく上回ることが示されています。高年収と学び直しの習慣が相関している実態です。
分野別のリスキリング効果(ケーススタディ)
ベント「転職に際するリスキリングに関する実態調査2024年」では次の知見が示されています。
「リスキリング後の転職で年収が増加した人は3分の2以上を占めます」
(出典:ベント)
同調査ではマーケティング分野で50〜100万円未満の年収増加が47.5%に達しており、分野によっては大幅な年収アップが見込めます。
マイナビ転職の公式リリースでは、リスキリングの効果として「資格取得」26.8%・「仕事の幅拡大」40.1%・「現職への活用」35.9%が挙げられています。また「リスキリングは必要だと思う」という回答は8割に達しています。
分野別のリスキリング効果を表にまとめます。
| 分野 | 年収への効果 | 需要の方向性 | 習得難易度 |
|---|---|---|---|
| AI・データ活用 | 高い | 拡大中 | 中〜高 |
| ITセキュリティ | 高い | 拡大中 | 高 |
| Webマーケティング | 中〜高 | 安定 | 低〜中 |
| プロジェクトマネジメント | 中 | 安定 | 中 |
| 会計・財務 | 中 | 安定 | 中 |
転職市場で評価されるスキル・資格
安定需要のある定番資格
CBTソリューションズの資格ランキングで6年連続1位の日商簿記は、業種を問わず安定した需要があります。取得コストが低く、経理・財務・管理職を目指すすべての職種で評価されます。
| 資格 | 特徴 | 需要 |
|---|---|---|
| 日商簿記(2・3級) | 業種不問・コスト低・受験者多 | 安定 |
| 宅地建物取引士 | 不動産・金融で高評価 | 安定 |
| 中小企業診断士 | 経営・コンサル系で評価 | 安定 |
| FP(ファイナンシャルプランナー) | 金融・保険・不動産で有効 | 安定 |
評価が上昇中のIT・デジタル系資格
IT・デジタル領域の資格は評価が上昇傾向にあります。企業のリスキリング投資上位がAI活用・セキュリティ・ITプロジェクトマネジメントであることと一致しています。
| 資格 | 特徴 | 需要の方向性 |
|---|---|---|
| 基本情報技術者 | IT基礎・幅広く通用 | 安定上昇 |
| 情報セキュリティマネジメント | セキュリティ意識の高まりで需要増 | 上昇中 |
| AWS認定資格 | クラウドの普及で評価上昇 | 上昇中 |
| G検定・E資格(AI関連) | AI活用の需要拡大で評価増 | 上昇中 |
安定需要の資格を土台にIT・デジタル系を加えることで、掛け算で市場価値が上がる仕組みが作れます。
適正年収の確認については適正年収の無料診断も参考にしてください。
30代の転職で資格がどこまで評価されるかは、30代の転職と資格の関係で詳しく解説しています。
市場価値を上げるために今日からできること
現在の市場価値を把握する
どんな取り組みも現在地の把握から始まります。診断ツールや転職エージェントの面談で、自分の経験・スキルが市場でどう評価されるかを確認しましょう。自分の市場価値の調べ方についても参考にしてください。
需要の高いスキル領域を選ぶ
すべてを同時に始めるのは非効率です。AI・セキュリティ・マーケティングなど、企業のリスキリング投資が集中している領域から興味のある1つを選び、集中投資します。
選ぶ基準:
- 市場での需要が高い(求人数・求人倍率で確認)
- 自分の現職スキルと近接している(学習コストが低い)
- 継続できる興味関心がある(挫折リスクが低い)
継続的な学習計画を立てる
完璧な計画より続けられる計画が重要です。1日30分でも継続できる範囲から始め、3か月単位で目標を設定します。
- 1か月目:該当分野の基礎知識インプット(書籍・動画)
- 2〜3か月目:資格学習または実務への適用開始
- 3か月後:成果を言語化し、自己PRに組み込む
市場価値アップの取り組みは、転職するかどうかに関わらず、現職での昇給交渉にも活用できる点も忘れてはなりません。
まとめ
市場価値を上げる5つの方法を整理すると次の通りです。
- リスキリングで需要の高いスキルを身につける:AI・セキュリティ・ITプロジェクトマネジメントが有効
- テクニカルスキルを習得しアピールする:85%以上の転職者が評価された実績あり
- 資格を取得して専門性を可視化する:57.7%が年収増加を実感
- 実務の成果を数値化して言語化する:今日から取り組める・交渉力向上に直結
- 副業・複業でスキルの幅を広げる:実績と経験が同時に積める
リスキリング経験者と非経験者の平均年収差は139.8万円です。この差は一朝一夕には縮まりませんが、どのスキルに集中して投資するかを決め、継続することが最も確実な方法です。まず現在の市場価値を把握し、そこから逆算して行動を設計していきましょう。
まずは現時点での自分の市場価値を無料で診断してみましょう。
よくある質問
Q.市場価値を上げるには何から始めればよいですか?
最初のステップは現在の市場価値を客観的に把握することです。自分の年収が市場相場と比べて高いか低いかを知らなければ、何を改善すべきかの判断ができません。診断ツールやエージェント面談で現在地を確認し、不足しているスキルを特定してから具体的な行動に移ることが効率的です。
Q.リスキリングをすると年収はどれくらい上がりますか?
マイナビ転職「正社員のリスキリング実態調査(2023年)」では、リスキリング経験ありの平均年収559.3万円・経験なし419.5万円と139.8万円の差があります。また転職前後の年収変動でも、経験あり+25.1万円・経験なし+8.1万円と約3倍の差が出ています。ただし効果はスキルの種類・業種・転職先によって異なります。
Q.副業は市場価値アップに本当に効果がありますか?
効果はあります。副業の主なメリットは、現職では経験できない業務スキルを積める点と、成果物・実績として面接でアピールできる点の2つです。ただし副業の可否は雇用契約で制限される場合があるため、就業規則の確認が前提です。副業を通じてリスキリングと実績の両方を同時に積める点が、単独の学習より効率的な理由です。
Q.資格取得は市場価値アップに有効ですか?
CBTソリューションズの調査では、資格取得により年収が増加したと回答した人は57.7%で、一定の効果があります。ただし資格の種類によって効果は大きく異なります。CBTソリューションズの2026年版資格ランキングでは日商簿記が6年連続1位で安定需要があり、IT・デジタル系資格の評価も上昇中です。需要の高い資格に絞って取得することが費用対効果を高めます。
Q.テクニカルスキルがない場合でも市場価値は上げられますか?
上げられます。市場価値を構成する要素はテクニカルスキルだけではなく、問題解決力・コミュニケーション力・プロジェクトマネジメントなどのポータブルスキルも重要です。また、実務での成果を数値化して言語化することは、スキル習得と並行して今日から取り組める方法です。何ができるかを証明する「言語化力」は、どの業種・職種でも評価される能力です。