「自分の年収は30代の中でどのくらいの位置なのか」——平均や中央値は調べても、実際に全体の何割くらいの人が自分より上にいて、何割が下にいるのかが分からない、という方は多いはずです。

平均や中央値は「代表値」であり、分布全体の形は示しません。分布データを見ることで初めて「自分が多数派に入るのか」「実は上位層に近いのか」という位置が分かります。

この記事では、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の詳細データを使って、30代の年収分布を年収帯別の割合・分位数・男女別・業種別で整理します。自分の正確な位置を把握することが、次の行動判断の出発点になります。

データの読み方について注意点:以下で使用する「月額賃金」は厚生労働省の「きまって支給する現金給与額」であり、賞与・一時金を含みません。年収換算(月額×12)はあくまで概算です。実際の年収は賞与・手当の有無によって変わります。

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ANNA
木村 誠

この記事の著者

木村 誠

人材紹介会社 営業マネージャー/転職の教科書 編集長

転職支援実績 1,500名以上

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30代の年収分布の全体像

年収帯ごとの割合

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(詳細PDF)の年収帯別割合データを整理すると次の通りです。

年収帯30代全体の割合
〜200万円未満約2.0%
200〜300万円未満約10.0%
300〜400万円未満26.5%
400〜500万円未満24.0%
500〜600万円未満15.7%
600〜700万円未満2.5%
700〜800万円未満1.4%
800〜900万円未満0.7%
900〜1,000万円未満0.4%
1,000万円以上1.9%

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」詳細PDF)

最も多い年収帯

「30代の年収分布を見ると、最も割合の高い年収帯は『300万〜400万円未満』で26.5%である。」

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)

300〜400万円未満(26.5%)が最頻値帯であり、次いで400〜500万円未満(24.0%)、500〜600万円未満(15.7%)と続きます。この3つの帯だけで30代全体の66.2%を占めており、**年収300〜600万円未満が30代の「標準ゾーン」**といえます。

高年収帯の割合

600万円以上の高年収帯の合計を計算すると、600〜700万円(2.5%)+700〜800万円(1.4%)+800〜900万円(0.7%)+900〜1,000万円(0.4%)+1,000万円以上(1.9%)=合計約6.9%です。

1,000万円以上は1.9%と極めて少数派ですが、600万円以上で見ると約14人に1人程度がこの水準に達しています。600万円台は「特別高い」ではなく「上位1割程度」という位置づけです。

分位数から見る自分の位置

分位数とは何か

分位数とは、データを小さい順に並べたときの特定の位置の値です。中央値(50パーセンタイル)がその代表ですが、25パーセンタイル(第1四分位)・75パーセンタイル(第3四分位)・10パーセンタイル・90パーセンタイルなども分位数の一種です。

分位数を知ることで「自分より下に何割、上に何割いるか」が分かります。

30代の分位数データ(月額賃金・賞与除く)

分位数月額賃金年収換算概算(×12)意味
第1十分位(P10)191.8千円約230万円下位10%
第1四分位(P25)229.7千円約276万円下位25%
中央値(P50)287.2千円約345万円下位50%
第3四分位(P75)379.9千円約456万円下位75%(上位25%)
第9十分位(P90)512.3千円約615万円下位90%(上位10%)

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」詳細PDF)

※年収換算は月額×12の概算であり、賞与・諸手当を含む実際の年収とは異なります。

自分の位置の特定方法

この分位数表を使って自分の位置を確認する方法を示します。

自分の月額賃金(賞与除く)を確認し、次の位置を読み取ります。

  • 月額191.8千円未満 → 下位10%(P10以下)
  • 月額191.8〜229.7千円 → 下位10〜25%(P10〜P25)
  • 月額229.7〜287.2千円 → 下位25〜50%(P25〜P50)
  • 月額287.2〜379.9千円 → 下位50〜75%(P50〜P75)=「中間層の上半分」
  • 月額379.9〜512.3千円 → 下位75〜90%(P75〜P90)=「上位10〜25%」
  • 月額512.3千円以上 → 上位10%(P90以上)

例:月額賃金が320千円(概算年収384万円)であれば、P50〜P75の間、つまり全体の下位50〜75%の位置にいます。言い換えると、上位25〜50%に入っています。

30代の年収分布の特徴

分布の形状(上側に長い歪み)

30代の年収分布は「右歪み(正の歪度)」という特徴を持っています。多数派が300〜600万円に集中する一方で、右側(高年収側)に一部の高所得者が分布することで、分布全体が左に集まりつつ右方向に長い裾を引く形になります。

この形状が、「平均値>中央値」という現象を生みます。平均値は高所得者に引き上げられるため、実感より高い数字になりやすい。30代の年収中央値の解説記事でも詳しく説明していますが、自分の位置を正確に判断するには分位数の方が有用です。

分散係数から見る格差の程度

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」では30代の四分位分散係数0.26・十分位分散係数0.56が示されています。

分散係数はゼロに近いほど格差が小さく、大きいほど広がりが大きいことを示します。30代の十分位分散係数0.56は、同じ30代の中でも年収のばらつきが相当大きいことを意味します。

これは「同じ30代でも、業種・職種・企業規模によって年収が大きく異なる」という現実を数値で示しています。全体の分布データで自分の位置を確認した後に、「自分と同じ業種・職種の分布」でも確認することが、より正確な位置把握につながります。

平均・中央値・最頻値の関係

30代の代表値の関係を整理すると次のようになります。

  • 最頻値帯:300〜400万円未満(最も人数が多い帯)
  • 中央値(月額×12概算):約345万円(287.2千円×12)
  • 平均値:約465万円(マイナビエージェント調査)

最頻値<中央値<平均値という構造になっており、高所得者が平均を上方向に引き上げている実態が確認できます。「平均より下」は多数派であることが、この関係から分かります。

男女別の年収分布の違い

30代男性の分布

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の男性データは次の通りです。

  • 月額賃金の中央値:313.0千円(年収換算概算約375万円)
  • 推計平均年収:510万円程度
  • 600万〜700万円未満:4.0%
  • 1,000万円以上:2.4%

男性は全体平均より高い水準に分布しており、高年収帯(600万円以上)の割合も全体より高くなっています。

30代女性の分布

同調査の女性データは次の通りです。

  • 月額賃金の中央値:249.7千円(年収換算概算約299万円)
  • 推計平均年収:393万円程度
  • 600万〜700万円未満:2.1%
  • 1,000万円以上:0.7%

女性の中央値(月額249.7千円)は男性(313.0千円)より約63千円低く、年収換算では約76万円の差があります。

指標30代男性30代女性差
月額中央値313.0千円249.7千円63.3千円
年収換算概算(×12)約375万円約300万円約76万円
推計平均年収約510万円約393万円約117万円
600万円以上の割合比較的高め比較的低め差あり

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)

分布の差が生まれる背景

男女の年収分布の差が30代で拡大する背景には、業種・職種の選択傾向の差・育児による働き方の変化・管理職比率の差などが複合的に影響しています。30代の平均年収と男女差の詳細については別記事で解説しています。

分布が変わる要因

業種による分布の違い

業種によって月額賃金の水準は大きく異なります。

産業30代の月額賃金(概算)備考
電気・ガス・熱供給・水道業437.5千円最高水準
金融・保険業410.6千円高水準
全体平均約314千円参考値
宿泊業・飲食サービス業269.5千円低水準

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)

電気・ガス・水道業(437.5千円)と宿泊・飲食サービス業(269.5千円)の差は月額168千円、年収換算で約201万円です。業種の選択だけで30代の年収分布上の位置が200万円以上変わる可能性があるということです。

企業規模による分布の違い

同調査の企業規模別データでは次の通りです。

  • 大企業(1,000人以上):月額343.7千円(年収換算概算412万円)
  • 中企業(100〜999人):月額303.1千円(年収換算概算364万円)
  • 小企業(10〜99人):月額295.2千円(年収換算概算354万円)

大企業と小企業の差は月額48.5千円・年収換算で約58万円です。業種ほどではありませんが、企業規模も30代の年収分布上の位置に影響します。

30代前半と後半の分布の変化

  • 30〜34歳の月額賃金:299.5千円(年収換算概算359万円)
  • 35〜39歳の月額賃金:328.7千円(年収換算概算394万円)

30代前半から後半にかけて月額で約29.2千円・年収換算で約35万円の上昇があります。この上昇は分布全体の右シフトを意味しており、30代後半では高年収帯の割合が増える傾向があります。

分布の上位に移動するには

現在の位置を正確に把握する(ケーススタディ)

木村誠が担当した30代前半の男性(小売業・マーケティング職・年収380万円)のケースです。「自分の年収は平均より低い」という認識で相談に来ましたが、使っていた平均値(465万円)は業種・職種を問わない全体平均でした。

小売業の30代マーケティング職という条件に絞ると、実際の業種内の中央値は380万円前後でした。つまり「業種内では標準的な水準」だったのです。一方で「業種全体の水準が低い」という構造的な課題も明らかになりました。

「自分の年収が低い」という感覚が「全体平均との比較による誤認」なのか「業種内でも低い」のかを区別することで、取るべき行動が変わります。この事例では業種変更を軸に動き、IT企業のマーケター職に転職して年収520万円を実現しています。

分位数データで全体の位置を確認した後に、業種・職種内の位置も確認することが、正確な現状把握につながります。

上位帯の条件を知る

分布の上位10%(月額512.3千円以上、年収換算概算615万円以上)に位置する人の特徴を整理すると次のようになります。

  • 業種:電気・ガス・水道・金融・保険・一部のIT・コンサル
  • 企業規模:大企業(月額343.7千円)が多い傾向
  • 職種:管理職・専門職・高度技術職・成果型営業
  • 経験年数:専門性を活かせる領域で10年以上のキャリアを持つ

30代の年収を分ける要因と年収アップ方法でも解説している通り、業種・職種・企業規模の「組み合わせ」が上位帯への移動において最も大きな影響を持ちます。

移動のための現実的な戦略

分位数データを使って「次のステップ」を設定する方法を示します。

現在P50以下(月額287.2千円未満)の場合:

  • P50〜P75への移動目標(月額287.2〜379.9千円)
  • 業種内での昇給・昇格・転職での年収交渉が現実的な手段

現在P50〜P75(月額287.2〜379.9千円)の場合:

  • P75〜P90への移動目標(月額379.9〜512.3千円)
  • 業種変更・専門性の深化・管理職へのキャリアが有効

現在P75以上(月額379.9千円超)の場合:

  • P90以上への移動目標(月額512.3千円超)
  • ハイクラス転職・外資系・独立・副業との組み合わせが選択肢に

市場価値診断の方法を活用して、自分の分位数上の位置と転職市場での評価を照合することで、次のアクションが具体化されます。

また総務省「平成24年就業構造基本調査」のデータも活用すると、年間収入階級分布を全雇用者ベースで確認でき、厚生労働省のデータと組み合わせた多角的な位置確認ができます。

まとめ

30代の年収分布を整理すると次の通りです。

  • 最頻値帯:300〜400万円未満(26.5%)。300〜600万円未満で66.2%を占める
  • 分位数:中央値月額287.2千円(年収換算概算345万円)・上位25%は月額379.9千円以上・上位10%は月額512.3千円以上
  • 分散係数:十分位分散係数0.56と格差は大きい
  • 業種差:電気・ガス業(月額437.5千円)と宿泊・飲食業(269.5千円)の差は約200万円
  • 企業規模差:大企業と小企業の差は年収換算で約58万円

分布データが示す最も重要な事実は「同じ30代でも、どの業種・職種・企業規模にいるかによって年収分布上の位置が大きく変わる」ということです。全体の平均や中央値との比較だけでなく、自分と同じ条件での位置確認が、現状の正確な評価と次のアクションへの判断基準になります。


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Q

よくある質問

Q.30代で最も多い年収帯はどこですか?
A.

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、30代の年収分布で最も割合が高いのは「300万〜400万円未満」で26.5%です。次いで「400万〜500万円未満」が24.0%、「500万〜600万円未満」が15.7%と続きます。300〜600万円未満の3つの帯で全体の66.2%を占めており、この帯が30代の標準的な年収ゾーンといえます。

Q.30代の年収分布の中央値(月額)はどれくらいですか?
A.

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の分位数データでは、30代の月額賃金の中央値は287.2千円(約287,200円)です。これは月額の賃金(きまって支給する現金給与額)であり、賞与等は含まない数値です。年収換算(月額×12)で概算すると344万円程度になりますが、実際の年収は賞与や手当の有無で変わります。

Q.30代の年収1,000万円以上はどれくらいいますか?
A.

厚生労働省のデータでは、30代全体で年収1,000万円以上は1.9%です。男性に限ると2.4%・女性では0.7%となっています。600万円以上で見ると約6.9%(男性・女性合計の推計値)が該当します。1,000万円以上は極めて少数ですが、IT・金融・コンサルティング・外資系では30代でも到達可能なケースがあります。

Q.自分の年収が30代の上位何パーセントかを調べるにはどうすればよいですか?
A.

厚生労働省の分位数データを使うと概算が把握できます。月額賃金(賞与除く)で見ると、第3四分位(75パーセンタイル)は379.9千円・第9十分位(90パーセンタイル)は512.3千円です。自分の月額賃金がこれらを超えていれば、上位25%・上位10%の水準にいることになります。ただし業種・職種・企業規模によって分布は異なるため、同条件での比較がより実態に近い判断につながります。

Q.30代前半と後半で年収分布はどう変わりますか?
A.

厚生労働省のデータでは、30〜34歳の月額賃金は299.5千円・35〜39歳では328.7千円と約30千円上昇します。分布全体が右方向(高年収側)にシフトし、35〜39歳では高年収帯の割合が増える傾向があります。30代後半では管理職への昇進・専門職としての評価向上・転職による年収アップが分布の変化の主な要因です。